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またたび日和

ヲタクで、悩める学生による、自己満足のための日記
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其壱 

 
1万ヒット御礼企画☆第一弾です!!
追記からどうぞw

最近、アニメ「君に届け」にはまっております・・・。
漫画はじれったくて瀕死だったので読んでません。
でも気になるので、姉の知人に貸してもらおうか作戦計画中です←


 
~帰り道~

 「夏郎ー、帰るわよー」
 「うん、今行くよー!」
 そう戸口にいる母に向かって、夏郎は返事をした。
 慌てて母が作ってくれた袋に竹刀を入れると、夏郎は友達に別れを告げた。
 ずらりと沢山の靴の中から自分の靴を見つけ出し履いていると、母と師範が話しているのが聞こえてきた。
 「・・・ですね。夏郎君は筋が良いですよ」
 「そう言っていただけなんて、うれしいですねぇ。家ではおじいちゃんに散々に言われてるものねぇ、夏郎」
 急に話を振られて夏郎が返事を出来ないでいると、それに構わず母と師範は笑った。
 最初から夏郎の返事など期待していないのだ。大人の会話とはそういうものである。夏郎は静かにため息をついた。
 「さ、帰るわよ。先生、今日もありがとうございました」
 「ありがとうございましたーさようならー」
 夏郎は差し出された母の手を何の迷いもなく取って、大きな声で挨拶をした。


    *        *


 「なんであんなこと言うんだよ」
 「あんなことってぇ?」
 とぼける母を夏郎は睨みつけた。
 「おじいちゃんに散々に言われてるって」
 「ああ…」と母は呟くと、悪びれもせずに「だって本当じゃないの」と言った。確かに本当である。しかし、あの言い方ではいつも怒られているように師範に取られてしまう気がして、夏郎は嫌な気分だった。
 「褒めてくれるときもあるよ」 
 「たまにね」 
 「でもあるもん!」
 「はいはい」 
 あまり気にしない様子で、母は返事をする。だが子供にとっては己のプライドがかかる一大事だ。師範に「ダメな子」と見られたくはないのに。悔しくなって、夏郎は竹刀を入れた袋を肩にかける紐を握って俯いた。

 確かに夏郎は祖父に剣道を指南してもらうとき、よく怒られる。姉などは「本当におじいちゃんの孫なのかねぇ」と、自分のことはそっちのけで夏郎をいじめる。
 夏郎にはよく分からないが、祖父は剣道の何かスゴイ人らしい。父もそれなりに名の通る人であるという話も聞いたことがある。賞状やトロフィーが無造作に置いてあったりする部屋もある。だから夏郎もそれなりにできるはずだと、周りからは言われる。 
 夏郎は剣道が好きだし、周囲に言われたから剣道をやり始めたわけではない。夏郎が「剣道をやりたい」と言ったとき喜んでくれた祖父や父も、特に夏郎に期待をしているわけではないようだ。
 一度父に「なんでおじいちゃんとお父さんはそんなに強いの?」と聞いたら、「まぁ、職業柄だなぁ」と笑って答えられたことがある。「だから血筋でも何でもないぞ」とも言った。
特に周囲の言葉を気にしていたわけではないが、父のその言葉で少し安心したことを覚えている。

 黙りこむ夏郎に、母が声をかけた。
 「アイス、食べよっか」
 母がそんなことを言うのはとても珍しいことなので、夏郎は頷いておくことにした。しかし空気を読んだわけではない。実際、食べたかったのである。
 「コーンにすると夏郎ってば下からこぼすからダメ。カップにしなさい」と言われ、渋々カップでオレンジを頼んでもらった。
 お店の横のベンチに座って、夏郎と母はアイスを食べた。
 「おいしい?」
 「うん」
 「コーンはもうちょっと大きくなったらね」
 「棒のは?」
 「あれも夏郎ったら、ぼたぼたこぼすからダメ」
 「こぼさないもん」
 「こぼしてるじゃない」
 ふくれる夏郎をよそに、母は竹刀の袋を取り上げた。
 「あら、もう穴があいちゃったのねぇ」
 「大切に使ってるよ」 
 慌てて自分のせいではないと夏郎が弁解すると、母は笑って「頑張ってるものねぇ」と答えた。それがうれしくて、夏郎はにっこりと笑った。
 「おじいちゃんもお父さんもね、『夏郎は頑張ってるな。まだダメダメだけど』って言ってたわよ。剣道を教わっている先生も、さっき『夏郎君は他の同い年の子より熱心ですね』って言ってらしたし」
 「それ本当!?」
 夏郎が目を輝かせ意気込んで聞くと、「本当よ」という答えが返ってきた。
 「うわぁ……おれってスゴイ!」
 「まだダメダメだけどね」
 そう言って母はもう一度笑うと、「アイス零れてるわよ」と夏郎の口を拭いた。

    *      *

 「ねぇ、お母さん」
 立ち上がると、夏郎は再び母の手をとった。アイスで冷えた手には暖かい手だった。
 「なぁに?」
 「今日の夕飯はなに?」
 「今日はねぇ………」
 そんな他愛のないことを話しながら、江藤親子は日も暮れかけた道を家に向かって歩いて行った。





*あとがき*
御礼企画は幼少なっちゃんで決まりですね!←

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性別:
女性
職業:
学生
趣味:
読書・アニメ鑑賞
自己紹介:
雑食過ぎてジャンルがまとまらないヲタクです。
最近はポケモンにハマっています。
ポケセンが家から徒歩30分くらいにあればいいのにとか毎日考えてます。

更新停滞気味。
コメントはアダルトにイラッとしたので受け付け停止中です。ご了承ください><

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